ぐるぐるクロニクルでは振り子時計を中心として色々なペーパークラフトを制作しています。展開図も配布していますのでダウンロードして作ってみてください。
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脱進機とは
時間の正確さにおいてはクォーツ時計の方が上なのに、価格は機械式の方が高いのが一般的です。
極端なことを言えば百万円以上する有名ブランドの機械式よりも百円ショップで買ったクォーツの方が正確な時を刻みます。
にもかかわらず、現在でも機械式の時計を求める人は後を絶ちません。
そういった人たちは一体、時計に精度以外の何を求めているのでしょう。
ブランド志向、高級感、機能美。
人の気持ちはわかりませんが、私個人は機械の温もりのようなものを感じます。
マクルーハン的に言えば機械式はホットで、クォーツはクール。(単なる言葉遊びです)
何の説明もなく、機械式だのクォーツだの言ってましたが、これらは時計の針の動きをコントロールする調速機の種類のことです。
クォーツは水晶振動子から一定の周期で発生する電気振動を利用した調速機。
機械式はクォーツ時計が誕生する以前から使用されていた、様々な種類の調速機の総称です。
その中でも代表的なのが振り子の等時性を利用したものです。
振り子が往復する時間は、振り幅、おもりの重さに関わらず、糸の長さによって決まる。
これが振り子の等時性です。
ガリレオさんが発見したと言われていますね。
具体的には1mの振り子の振幅(行って戻る)にかかる時間はおよそ2秒です。
この往復運動によって回転運動を制御してやれば、一定の速度で回転する機構を作ることが出来ます。
これが振子時計の基本的な原理です。
しかしここで一つ問題があります。
振り子は空気抵抗や摩擦などによって、そのうち止まってしまいます。
そこで振り子を止めないために外部からわずかにエネルギーを与えてやる必要があります。
この役割を担うのが脱進機というものなのです。
どのようにして脱進機は振り子にエネルギーを与えるのか。
実際に動画を見たほうがわかりやすいでしょう。
振り子の長さ25cm
(周期およそ1秒)
振り子の長さ1m
(周期およそ2秒)
回転運動をしている歯車をガンギ車と呼びます。
そのガンギ車の歯にぶつかっているのはアンクルといいます。
何が往復運動をしている振り子にエネルギーを与えているかおわかりでしょう。
重力によって錘のついたガンギ車は回転し、ガンギ歯がアンクルに衝突、そして滑りながらアンクルを押すことによって振り子にエネルギーを与えるのです。
往復運動が回転運動を制御し、回転運動が往復運動にエネルギーを与える。
脱進機はこの二つの機能を実に巧みに両立させた、人類の叡智たる機構なのです。
ギャラリー
ガンギ車の構造はTrevithick's Locomotiveの歯車で使用した方法と基本的に同じ。
同じ形の紙を何枚も重ねて厚みを出す方法もあるが、個人的に好きではない。
なんか安易すぎるというか、特に紙を切り出す作業がルーティンになるのが楽しくない。
ラチェットには紙バネを使用。
予想以上に弾性を確保できて満足。
直径16cmとかなり大きなガンギ車。
さらなる小型化が急務だな。
錘には10円玉を使用。
企画立案から1年 (2007/12/1 記す)
インデックスページで "mechanical paper model web site" と謳いながら、それっぽいのは"Trevithick's Locomotive"ただ1作品という体たらくだったのですが、このたびようやく機械機構の教科書的存在、振子時計の心臓部ともいえる脱進機が完成いたしました。
行き当たりばったりの設計ではなく、理論化ができたので、実際に振子時計に装備するときは、これをスケールダウンすればいいだけのはず。
不安要素は輪列が重なることで大きくなる力のモーメントかな。
それに耐えるだけの強度を紙の歯車に持たせることができるかどうかが肝になると思う。
まあ振子時計そのものを作るには、これまで以上の困難が待っていると思われますが、とりあえず一歩を踏み出したわけであります。
実は紙で時計を作る試みは、既に多くの方が成功させています。
例えば日本では"螢刻堂"さんというサークルがコミケなどでキットを販売されていますし、
海外であれば
Make Your Own Working Paper Clock
のようなものもあります。
不可能でないことが実証されているだけでも励みになりますよね。
象牙の塔の住人ではないのですから、あてのない努力など続きようがありません。
そんなわけで後発の有利さを生かして先人のアイデアや技法を取り入れ、目指すはシンクレア・ハーディングのグレートホイール・スケルトン・クロック。ヾ(゜-゜;)ヾ(-_-;) オイオイ...
とりあえず戦意高揚のためにPaper Clock Project なんてお題目を打ち立ててみました。
さて、針のついた振子時計が完成するのはいつになることやら≧(´▽`)≦